2006年 06月 04日
コートダジュールの宝石/14
ニースの中心からバスで20分ほどのシミエの丘に
マチス美術館はあります。
学生の頃から愛してやまないマチス。
私にとってニースに行く=マチス美術館に行くことです。
でもまさかここへ3たび来れるとは思いませんでした。
1963年に開館したこの美術館は
ローマ時代の湯治場遺跡と闘技場遺跡のあるシミエの丘にあり、
長年ガラン・ド・ココナート家の領地だった場所でもあります。
現在美術館に使われているヴィラ・デ・ザレーヌもその領地内に
あったため、周辺には見事に当時の風景が保存されています。
17世紀のジェノバ様式を再現した騙し絵装飾の窓。
ポスターにも騙し絵窓が使われています。
中は撮影禁止なので写真はありませんが、
邸宅を利用しているので、美術館という堅苦しさはなく、
規模もそんなに大きくありませんので
温かな雰囲気の中でのんびりと見て廻ることができます。
マチスは亡くなる直前にまとまった数の作品を市に寄贈しています。
また、次いで遺族も多くを寄贈しています。
ここにあるコレクションはマチスの作品の変換と本質が良くわかるように
マチス自身が選んだものが中心になって構成されています。
絵画コレクションからは光と色使いの発見と発展を見ることができ、
グラフィック部門ではペン画、木炭、デッサン、リトグラフ、版画、
エッチング等彼の実験した様々な技巧を見ることができます。
上階はロザリオ礼拝堂の習作や模型の部屋、
タヒチ滞在の部屋、オダリスク、ダンスと切り絵の部屋
と、各部屋ごとにテーマが分かれて展示されており、
礼拝堂の模型やPolynesie-La Merのタペストリー大作など、
どの作品を何度見ても飽きないですし
その都度違う感動を受けます。
ここは地下2階の出口から出たところ。
この日は学生がたくさん見に来ていました。
マチスはヘンリー・クロフォードに宛てた書簡で
次のように述べています。
「私は、いつも自分が払った努力の跡を隠そうとしてきた。
私の作品には、そこにつぎ込まれた労の一片たりとも見えることなく、
軽快さと春のきらめきが感じられることを望んできた。
若い人たちが、見かけの容易さとデッサンの無造作しか知覚せず、
私が必要と考えるある種の努力をしないですませるための口実に
しないか、気がかりだ。」
*ニース マチス美術館コレクションガイドより引用
私がマチスを愛したのはまさに彼のこの精神です。
デザインに携わる者として、いつまでも忘れてはいけない
大切な精神だと思います。
美術館前にはたくさんのオリーブの木が植えられた公園があり、
そこでは毎年ジャズ・フェスティバルが開催されるそうです。
1954年11月3日、ニースで亡くなったマチスは
美術館近くのフランシスコ会修道院に並ぶ墓所に眠っています。
by izola
| 2006-06-04 18:40
| コートダジュール2006