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今年初めての逃亡先は京都の「俵屋」。

昨年後半に「俵屋の不思議」を読んで、
どうしてもこのお宿の不思議と職人技に触れてみたくなりました。





俵屋までは自宅からわずか1時間足らず。
今までで一番近い逃亡先です。

京都に来た際に何度か前を通りかかったり
ギャラリーに立ち寄ったりしましたが、
その時の私にとって、俵屋は場所は近くても
あまりに有名すぎて敷居の高い遠い存在のお宿でした。

正月飾りが施された門。
門松は右に根曵の雄松、左が雌松。
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小さな門をくぐって右手に進むと土間があり、
手前の常滑の大壷にはたっぷりと椿が活け込まれています。
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靴を脱ぎながら上を見上げると降り注ぐように餅花が。
俵屋では毎年「事始め」の12月13日に従業員全員で
無病息災の願いを込めて餅花を作るそうです。
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土間の手前の出入口横には大王松。
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上がり座敷の金屏風にはベールのように流れ落ちる
日陰蔓と金比羅宮のお守りが掛けられ、
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足元の李朝こより机の上には鏡餅と俵が置かれていました。
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上がるとすぐ前に小さな坪庭があり、
その上から餅花をぐるりと滝のように流して、
中心の蹲に南天と椿を溢れんばかりに活けています。
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坪庭の奥には小さなラウンジが。
ラウンジの室礼も正月らしく厳かで華やか。
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新年を祝うお酒は自由にいただくことができます。
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シックで美しい羽子板。
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黄色い大きな実は熊本県八代産の「晩白柚」。
背景は松竹梅図小屏風。
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俵屋では伝統的な四季折々の室礼に加えて
店主佐藤年さんならではの感性で新しく加えられた
装飾も数多くあります。

今ではどこでも目にするようになった餅花飾りも
20年以上前に俵屋が取り入れたものが
いつの間にか京都中に広まったそうです。

最後の写真の晩白柚も、
ある年に知人から贈られたこの実を見て、
形のおおらかさと実の黄色、葉の緑、実と葉の色を長持ちさせる為の
工夫を隠すために茎に付けた飾りの赤という色合せが気に入って
毎年俵屋の正月を彩るようになったとのこと。


伝統を守りつつも新しいセンスを絶えず取り入れる・・・
それは滞在中あらゆる場面で何度も感じた事でした。

しかし、そのセンスとは昨今流行の和モダンテイストのように
一見してモダンと感じる素材使いやスタイリッシュな
デザイン処理の事ではありません。

例えば先程の餅花や晩白柚のように知らなければ
全くわからない季節の表現であったり、
館内のあちこちで感じた灯りと自然光の活かし方や
狭い敷地の中での景観の工夫、
迷路のようでありながら落ち着きを感じる空間作りと
そこかしこにちりばめられた
見過ごしてしまいそうなわずかな演出・・・。

目に見えるものよりも心で感じるものにより多くの
さりげない工夫が施されているように感じました。

たった一晩の滞在ではとても見尽くせない
不思議に満ちた宿、
そんな俵屋の不思議の魅力を
昨年から蓄積した宿・ホテル記事と共に
少しずつ紹介していきたいと思います。
by izola | 2007-01-06 18:20 | 俵屋旅館

旅は心の宝石箱