2007年 07月 31日
俵屋/2
季節を演出する仕事をしていながら
ブログでは季節感無視時系列無視な更新を
続けている恥ずかしい私なのですが、
こうなったらいっそ開き直って時系列無視(というより逆行?)
の法則に従い、1月に滞在したPH東京レポに引き続き、
お正月に滞在した俵屋旅館のレポを更新したいと思います。
よりによって一番暑い時期に正月ネタかよっ!と突っ込まないでくださいね〜。^^;
宝永年間創業の俵屋旅館には
幕末の禁門の変(1864)で焼失後に再建された
木造二階建ての本館と、建築家吉村順三氏設計の
鉄筋コンクリート造の新館(1965竣工)があり、
全18室ある客室は全てしつらいが違います。
今回私が滞在したのは本館2階にある「霞の間」。
こちらの建築家のブログを拝見して、
窓から見える青竹の清々しい眺めに一目惚れしました。
でも、お正月滞在で部屋指定の予約は到底無理だろう
と思いつつ、勇気を出して電話してみると
幸運にもこのお部屋と1階の2部屋のみ空いているとのこと。
迷わず霞の間に決めました。
扉を開けると、踏込みの壁には
お花ではなくおさるさんがお出迎え。
とぼけた表情が可愛らしくて思わずくすり。
名旅館に足を踏み入れた緊張がほぐれました。
部屋には佐藤年さん手描きのスケッチがあります。
優しいタッチで部屋の特徴や建具の素材の説明などが
丁寧に書き込まれた絵と文字からは
当主の宿に対する深い愛情が伝わってきます。
踏込をくぐると四畳の次の間。
次の間から本間の庭に面した部分は全て窓になっており、
次の間は足元を掘り込んだ出窓に腰掛けて
青々とした竹を眼前に眺める事ができます。
次の間に入って踏込を振り返る。
出窓の後ろにはお茶セットが置かれた小さな棚。
次の間から本間を見る。
本間から次の間を見る。(本間は八畳)
写真で見ても判ると思いますが
部屋全体の天井高が通常よりかなり低いので、
入ってしばらくは圧迫感があります。
ですが、中庭に面してL字に連続する窓が
視線を遮らずに互いの空間を抜けていくので、
中空の庭を含めた空間を部屋全体の広さと感じる事ができ、
その眺めと天井の低さが次第に心地よい開放感と
穏やかなお籠り感を誘ってくれます。
庭を眺めてほっこりしながらいただくのは
宿泊客がこぞって絶賛するというわらび餅と煎茶。
ふるふると柔らかな食感と優しい甘さ。
噂に違わず美味でした。
わらび餅好きの私は5回くらいおかわりしたかった!笑。
ここに座って庭を眺めたかったのですよねぇ・・・。
出窓の足元の引き戸はイカット?が張ってあります。
座り心地最高と評判の「ベンツ椅子」。
あとでこれに座ってゆっくり読書しましょう。
決して広くない部屋も庭もこのように
切りとられると窓であったり絵画であったり・・・。
本間の床の間はちょっと変わったレイアウト。
正月アレンジは伸びやかに流れ落ちる柳と華玉。
漆台の上にはちっちゃな白鼠の乗った米俵。
掛け軸はまたまたお猿さん。
それぞれの部屋に飾られた美術品の説明書きも
きちんと置いてあるところも素晴らしい。
中庭を上から覗くと・・・
庇の上に張られた銅板がいい色。
隣との境界は意外と狭いのです。
でも互いには決して見えないのです。
本間から庭越しに見た次の間。
ガラス窓の外には簾、内側には遮光の黒いカーテン、
一番内側は雪見障子の4重構造です。
季節や時間に応じて上手く光や眺めを
使いわけられるようになっています。
踏込の上の照明。
夜の次の間。
こんな書斎があったらなぁ・・・。
ここに限らず、京都は狭い土地の中で空間や眺め、
光にメリハリを付けるのが本当に上手いと思います。
俵屋ではどのお部屋からもそれぞれ違った趣向で庭が
眺められるそうなので、部屋のしつらいだけでなく
庭の眺めの違いを確かめる為だけにでも
全室通いたくなってしまいます。。。キケンだ・・・。
by izola
| 2007-07-31 21:05
| 俵屋旅館