俵屋/3

<客室/2>


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自宅からほんの一時間足らずで辿り着く
この宿の前で、今まで幾度も足を止めていました。


自家用ジェットで行かなければならないような
秘境にある訳でもなく、
恐ろしくゴージャスな建築や内装である訳でもなく、
世にも珍しい美食やサービスを提供するという訳でもない・・・

けれども、
世界中のセレブがわざわざ足を運ぶという名旅館。


京都の町中の細い通り沿いにひっそりと佇み、
知らなければすっと通り過ぎてしまいそうな
ささやかな入口の向こうに広がる
小宇宙のような伝統美の世界を想像して、
いつかその世界の内側を覗き見る自分を夢見て、
憧れの眼差しを送りつつ
何度も静かに歩み去りました。







年齢も人生経験も勿論経済的にもまだまだ
至らない私がこの世界の内側に立てるようになるのは
早くても40代50代になってからだと思っていました。

そんな私を思いがけずこの敷き居の内側に
呼び込んだのは一冊の本、
村松 友視氏の「俵屋の不思議」。

憧れの俵屋の世界をせめて文章で垣間見たいと
手に取ったこの本を読み終えた私は、
その不思議を自分の眼と心で直に感じたいという
強い衝動をどうしても抑える事ができませんでした。


「井居畳店」の畳・・・
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「唐長」の京からかみ・・・
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「静好堂中島」の和紙・・・
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「平田翠簾商店」の簾・・・
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「中村外二工務店」の匠技・・・
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知らなければ一見何の変哲もないただの畳であり
簾であり障子であり和室である・・・
そのさりげなさの奥に深く宿る京都の職人衆の技と心意気、
そしてその職人衆を心から愛してやまない主との
密接な信頼関係・・・。

それこそがこの宿を世界に二つとない特別な場所に
創り上げているという事実を知る事が出来、
こうしてその心技を一瞬でも体感できる幸せに
感謝しました。
by izola | 2007-08-02 16:56 | 俵屋旅館

旅は心の宝石箱