旅の感動

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旅に出ると色んな景色や物や芸術や出会いに感動します。

そんな中でも絵画・芸術の分野で今までで最も感動したのは
ニース郊外のヴァンスという小さな町にある、アンリ・マチスが最晩年に手掛けた
「ロザリオ礼拝堂」(写真)。

マチスは高校生の頃から敬愛していて、ニースにある「マチス美術館」と
ヴァンスの「ロザリオ礼拝堂」にはいつか必ず行こうと心に決めていました。

マチス美術館はニースの街からバスで20分くらいの山手にあり、
美術館の中はマチスのアトリエを模した部屋がいくつもあって、
美術館というよりは彼の家に絵を見せに来てもらっている・・という感じで
とても温かな雰囲気に溢れた素敵な美術館です。
ここには運良く2度訪れる事ができました。

ヴァンスにある「ロザリオ礼拝堂」は拝観できる曜日が決まっています。
ニースからバスで約1時間の郊外の町で、バス停から徒歩で10分程山手に
上がって行くと斜面に貼り付くように小さな小さな礼拝堂があります。
マチスが手掛けたのでなければ、おそらく地元の人しか訪れることのないような
本当に小さくて可愛い礼拝堂です。

本当にここがあの有名な礼拝堂?と思いつつ小さな門をくぐり、
階段を降りていき、礼拝堂の中に一歩足を踏み入れた途端、
眩しい程の光りに包まれた礼拝堂のステンドグラスが目に飛び込んできて
その光景のあまりの美しさに、しばし呆然と言葉もなく立ち尽くしてしまいました。

それは無神論者の私が思わず跪いてしまいそうになるほど神秘的な力があり、
イタリアのドゥオモなどから感じるような「荘厳なる神々しさ」ではなく、
一瞬で心を射抜かれるような、ここに来たら自分と向き合わずにはいられない
ような、そんな不思議な力を感じる空間でした。
マチス自身も、この建物には「光」が最も重要な要素と考えていたようです。

30坪程の決して広くない礼拝堂の中は祭壇の右壁面には白いタイルに黒のデッザン
で描かれた「聖ドミニコ」「聖母子」「十字架への道」が飾られ、
左壁面には一面に青・緑・黄のガラスのみで構成されたステンドグラス。
何の装飾も施されていない祭壇とベンチは粗末ともいえる程のシンプルさです。

何の説明もいらなくて、ただそこに身をおいた瞬間に、それを目にした瞬間に
心にダイレクトにメッセージが飛び込んで来る・・そんな素晴らしい空間です。

自分の最晩年に、もう一度訪れてみたい場所。
by izola | 2004-11-01 19:41 | トラベル(海外)

旅は心の宝石箱