かしまし姉妹旅 '10アメリカ /11


<4日目/Fallingwater 後編>


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落水荘では見学者の目的に応じて様々なツアーが行われています。







今回姉さんが予約してくれたのは専門的な知識を持つガイドが
通常の見学では見れない場所も含めて約2時間かけて
邸内をくまなく説明、案内してくれる「In-Depth Tour」。
主に建築に深く興味を持つ人や建築の仕事に携わる人向けのツアーです。

勿論私にはガイドの説明内容はほとんどわかりませんでしたが、
建物に関する予備知識が若干ありましたし最大の目的は
落水荘をじっくり内部から見て触れて感じる事だったので、
大変充実した内容のツアーでした。



*その他ツアーの詳細はコチラをどうぞ。








ツアー参加者は国も性別も年齢も様々な10名ほど。


まずは案内所から落水荘までの道すがら、この建物が建てられた経緯や
オーナー、土地についての説明があります。


落水荘に着くと川の手前で再び説明。

その後、川を渡りアプローチの上部にかかるパーゴラや角に外開きになった窓、
渓流の岩壁と続くように石が貼られた外壁を見ながら玄関へと向かいます。
(*トップ写真)


1階のリビングルーム。
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ライトのモジュールであえて低く抑えられた天井は
その低さが前後左右の豊かな広がりと落ち着きを生み、
横幅いっぱいの連窓に切り取られた緑豊かな景色、
岩盤そのままに見える床とは互いが繋がりあって
まるで森の中に静かに佇んでいるような不思議な感覚を覚えます。



居間に入ってすぐ左にはソファ、その奥に書斎コーナーがあり
本棚の向こうにはリビングからそのまま滝に続く川へ降りる事が
出来る階段があります。
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リビングからそのまま川遊びに行けるなんて・・・!



居間右手は手前がダイニングスペースで中央にハース(炉辺)。
この場所を起点にこの住宅は設計されました。
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暖炉前の床には外部の岩盤が流れ込むような形で露出し
なんの違和感もなく居間の一部となっています。
赤い丸い球体はワインを暖炉の火で暖めるための釜でしたが
ほとんど使われなかったとか。。。



他にも邸内には実用的なものもそうでないものも含めて
ワクワクする仕掛けがあちこちに。



本当はそれら一つ一つを写真を添えて詳細に紹介したいところですが、
実際に訪れてみて身に沁みて感じたのは写真や言葉をいくら重ねても
落水荘の素晴らしさの本質を伝える事は出来ないという事実。


それは落水荘だけでなく世界中に存在する至高の建築や美術品に共通する
ことですが、直にその場所に立ち、自らの目と心で感じる事でしか
本質を理解する事は出来ない・・・
その事実をこれほどまで痛烈に感じたのはここが一番かもしれません。








とはいえ、ほんのひと欠片でもいいから私の感じた想いを届けたい。
そう思ってしばし無駄な努力を重ねてみます。^^;




カウフマン氏の寝室角の窓とデスク。
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角の窓は内側に開くと中心の仕切り無しで外の景色が見え、
デスク横の窓を内側に開く為わざわざ天板を1/4円切り取る。。。
建築家ならではの拘りっぷりに思わずニヤリとしてしまいます。

ここ以外にも施工を請け負った業者さんはさぞかし大変だったろうなぁ・・・
実際に住んだクライアントさんも色々大変だったろうなぁ・・・
と苦笑いする場所は多々あり。
居室のレイアウトも大変魅力的ではあるけれど決して住む人が
使いやすい家ではありません。


ライトは建築のみならず家具や照明デザインも手掛けていましたので
邸内には造り付けの家具がたくさんありました。
ただし、ライトの家具は空間には合っていても使い勝手が悪いものも多く
クライアントたちは困惑しながらも辛抱強くそれらの家具とつきあい、
慣れていったそうです。

偉大な建築と共に暮らすのは海よりも広い愛情と湧き出る泉のような
経済力が必要だったんですね。^^;



実際に邸内の家具以外のインテリアのどこまでをライトが手掛け、
住人の趣味が反映されているのかわかりませんが
カウフマン一家は芸術にも造詣が深く、特にライトの主宰する
タリアセン・フェローシップに籍を置いた事もあるジュニアは
洗練されたセンスの持ち主だったそうなので、
きっとライトの好みを配慮しつつ自分達の趣味を発揮して部屋を
しつらえたのでしょう。


ざっくりとしたファブリック、プリミティブなオブジェ、
様々なテイストとデサインの家具や備品、ステンドグラス等・・・
どれもが温かな質感、フォルム、色柄を持ち、それらがさり気なく
配された空間にはなんとも言えない安心感と豊かな生活感が満ち溢れ、
部屋の何処にいても窓からは春夏秋冬姿を変える美しい自然が見える。
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その全てが心地良く情緒に富んだ様子はまるで俵屋に居るよう。


年さんはここに来られた事があるのかもしれない・・・
そう思うほど、俵屋と落水荘の居室からは同じ空気を感じました。


落水荘を誰よりも愛し、その価値を知っていたジュニアは両親の死後も
ここを大切に管理し、世紀の建築を後生に残すべく住宅と土地を
西ペンシルバニア環境保護委員会に寄贈しました。



落水荘は最高の腕と拘りを持つ天才と理解ある寛容なクライアントを得た事で
現在もその美しい姿を保っているのです。







リビングからテラスに出る。
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テラス中央にはブッダヘッド、右奥には炉辺に繋がる大きな岩盤を
貫くように縦に伸びる石壁と連窓。
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リビングの下を流れる滝。
うーむ、、、改めて、よくぞこんな場所に建てたもんです。
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こちらはカウフマン夫人の寝室に続くテラス。
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テラス側の壁は全面チェロキーレッドの窓枠。
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チェロキーレッドはライトが好きでよく使っていた色。
もう少し明るい色かと思っていましたが、実際に見ると乾いた赤土を
思わせる茶色がかった落ち着いた赤。

このチェロキーレッドは建物の窓枠や床に使われていて
とても素敵に馴染んでいます。

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テラスの手摺から下を覗き込むとダイナミックな滝の流れが眼前に。
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ライト建築には垂直と水平のラインが多用されているので
どうしても堅苦しい、重々しい印象を持ちがちですが、
実際に建物を間近で見ると確かにラインとしては水平であり垂直であっても
どこにも「角」がないことに気付きます。

それらのラインは、例えるなら柔らかな芯の鉛筆でフリーハンドで
描かれたスケッチのような優しさを持った水平であり垂直なのです。


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水平は大地や水面、垂直は樹木や滝の流れ・・・
ライトの建築は常に自然と強く深く結びついています。


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メイン棟をじっくり見た後はゲストハウスへ。
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ゲストハウスへ続く階段の上には分厚い手漉き和紙をパタパタと折り畳んで
伸ばしたような優しい曲線の片持ち庇が連なっています。
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リビング、ベッドルーム、バスルームのみで構成されたシンプルで
コンパクトなゲストハウスはこれまた大変に居心地良さそうな空間でした。
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他にも通常公開していないオフィスとして使われている部屋なども
見せていただいて見学終了。








案内所へ戻る道。
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ライト建築に多用されている幾何学モチーフは樹木や草花、雪の結晶等、
自然から啓示を得たものがほとんどです。


自らのルーツであるウィスコンシンでの生活と記憶、
そしてこの土地が育む豊かな自然があったからこそ落水荘は生まれたのだと
しみじみ実感すると共に、「建築は自然に根ざしたものでなけらばならない」
とライトが唱えていた有機的建築(オーガニックアーキテクチャー)の意味を
今回の訪問で僅かながら理解出来た気がします。









大満足の見学を終えて帰路につく。


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帰りの運転も監督任せ。
私はというと、憧れの場所を見尽くしたという深い満足感と疲労感で
帰りの車内は意識朦朧でほとんど記憶無し。^^;


監督ほんまにすんませんでした〜〜!!!(滝汗)


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アメリカで見に行きたい場所は落水荘だけです。

以前からそう言っていた私の言葉を本気で捉えて実現に向けて
様々な手配をしてくださった姉さんとロングフライトでお疲れのところ
往復レンタカーを運転して憧れの地へ導いてくださった監督には
どんなに感謝の言葉を重ねても足りません。


この経験と記憶をお二人と共有出来た事は私の一生の宝物です。
本当に有難うございました。m(_ _)m




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四季の落水荘や室内の詳細な様子、図面、関係者のインタビューなどが
紹介されていて充実の内容。


*かしまし姉妹旅 '10アメリカ/indexはコチラ

*姉さん&監督の北米記事目次はコチラ
by izola | 2011-02-01 14:48 | アトランタ&ピッツバーグ2010

旅は心の宝石箱