あらや滔々庵/6

<夕食>

お楽しみの夕食です。

料理の内容もさることながら
器との組み合わせがこれまた素敵でした。
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食前酒は地酒の氷室仕立て。
シャーベットのように半凍りにさせた冷酒が食欲を誘います。
左はカボチャの冷製スープ。
中にはタピオカと生クリームが入っていて
カボチャの自然な味を活かしたあっさりめのポタージュに
タピオカの食感とクリームのコクが加えられて
あとの料理を期待させる美味しさ。

魯山人は自らが料理長を務めた「星岡茶寮」において、
ひたすらに素材にこだわり、その素材を活かした調理と演出に
こだわり、熱いものは熱いまま、冷たいものは冷たいままに
出す事を徹底させたそうです。

他にもサービスの質の高さ、
サービスに関わる人間の知識の高さ、服装、部屋のしつらえetc
全てにおいて妥協することなく自分の理想を現実化する努力をした
今でいうフードプロデューサーのパイオニア的存在です。

当然、客にも厳しく、出された料理にいつまでも手をつけずに
商談ばかりしている客には激怒していたとか。笑。



料理は一品ずつタイミングを見計らって
仲居さんが運んでくれます。

●前菜三種

左上/夏野菜ののっぺい仕立て(蛸、バイ貝、トマト、冬瓜、オクラ、金時草)
右上/枝豆豆腐
下/マスカットと海老の白和え
のっぺいの蛸とバイ貝が驚く程柔らかく、いい味です。
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●アイナメの椀もの

金沢の地野菜の太胡瓜とアイナメを蒸して出汁をかけた一品。
艶やかな漆椀の柔らかい手触りと素材を活かす為に極限まで
薄味に仕立てられた出汁に手も舌もほっこり。
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●お造り(白虎海老/ヒラマサ/鱸/バイ貝/赤烏賊)

白虎海老の身がプリッとして甘かった。
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●蓮饅頭(海老、鰻、銀杏、百合根入り)

開けるのが惜しい程美しい椀蓋。手描きです。
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中には大好きな蓮饅頭。
柔らかく蒸された蓮と中の具材の食感とトロリとかけられた
出汁とのハーモニーがたまりません。
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●甘鯛の焼物

香ばしい魚の香りと白髪葱と出汁が合っていて、
そろそろ一杯になってきたお腹にもすんなりと入ります。
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この器は山本長左さんという
宮内庁御用達の作家の作品です。
驚く程繊細な絵付けで、料理を忘れてしばし見入ってしまいました。
この方の作品は販売されているのもいくつか見ましたが、
どれもこのように丁寧な絵付けが施された作品ばかりで
大皿などはそれはそれは綺麗でした。
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●蚫とアボカドの肝焼き

蚫にアボカドってどうなん!?と初めはかなりびびっておりましたが
一口食べてその美味しさにオドロキ。
醤油ベースの甘辛いタレに蚫の肝を加えてあり、
そのタレで煮込んだアボカドは
なんでかわからないんですけど美味しいんですよ。笑
こんな組み合わせ誰が初めに考えたんでしょ?
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見えにくいですが、この青磁のお皿もとても綺麗でした。
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●無花果の揚げ出しと金時草の天ぷら

これまた初めて食べる無花果の揚げ出し。
無花果のほんのりした甘さと独特の香りが合います。
この器の質感も料理とぴったり。
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●茹でた毛蟹&身を酢ゼリー寄せにしたもの

冬の時期には蟹料理を目当てに来る人も多いとか。
私はそこまで蟹好きではないのでこの位がちょうどよいです。
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●櫃まぶし、赤出し、漬け物

締めのご飯は何故か櫃まぶしでした。
白飯じゃないので驚きましたが、これもとても美味しかったです。
さすがに1杯食べるのがやっとでしたが。
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●メロン/抹茶アイス小豆添え/芋羊羹

もちろん別腹なので、きっちり完食。
芋羊羹うまし。笑
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今までは日本料理といえば京都が頂点だと
思い込んでいた認識を改めなければいけないと感じる程
加賀の文化と料理のレベルの高さに感動しました。

ただ単に美味しい物を食べさせるだけでなく
五感に訴えることでより深い感動を与えるという点では
京文化の洗練よりも加賀文化の大胆さの方が
驚きがあるかもしれません。

日本の文化も奥深いなぁとつくづく感じ入るとともに
自分の不勉強ぶりを反省。
もっと加賀について知りたくなりました。

美味しい夕食で心もお腹もいっぱいになりましたが
ここにはまだ食後のお楽しみがあるのです。

それは宿泊客限定で夜8〜10時のみ営業のバー
「有栖川山荘」。
こちらの紹介は次回に。
by izola | 2005-09-28 13:30 | 旅館

旅は心の宝石箱