End of Time

ダヴィンチ展を見た後に向かったのは
同じ森美術館の上のフロアで開催されている
「杉本博司 時間の終わり展」

ダヴィンチ展と一緒に券を買うと+¥500で
見ることができたため、ついで気分で行ってみることに。
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ところが、これが予想もしなかった大当たりの
展示会でした。



BRUTUS9月号で上記タイトルで杉本博司特集が
組まれていましたね。

会場に一歩入ると昨秋にカルティエ財団現代美術館で発表された
最新シリーズの「Conceptual Forms」と彫刻が展示されています。

まず最初にここで緻密なアングルで撮られた数理模型の
モノクロ写真の迫力に圧倒されます。

次の空間にはNYの自然史博物館のジオラマ展示を撮影した
「Dioramas」シリーズ。
ジオラマも写真にするとここまでのリアリティが出るのかと。

その次が「人間が見ることのできる共通、不偏の風景」を
求めて世界中の海を巡って撮影した
「Seascapes(海景)」シリーズ。
この空間は入った瞬間、思わず全身に鳥肌が立ちました。

空と海を5:5の比率で撮影した極度にシンプルな構成
にもかかわらず、目にした瞬間にゾクッとするような何かを
感じて思いがけず立ちすくんでしまいました。

ぼんやりと白く浮かびあがるその原始的風景は
まるで本当に目の前に広大な海が広がり、自分の目で
水平線を眺めているかのような錯覚に陥るのです。


その他にも、全米各地に建設された劇場建築を
スクリーンに投影した映画1本分の光のみで撮影した
「Theaters(劇場)」シリーズ、
蝋人形にルネサンス絵画と同じ照明を施して撮影した
「Portraits」シリーズ、
京都の三十三間堂の観音像1000体を朝の光だけで
撮影し、平安貴族の見た光景を再現した
「SEA OF BUDDA」など興味深い作品群が続きます。

最後に印象的だったのは
20世紀のモダニズム建築を蛇腹式大判カメラで
焦点を無限遠のさらに先に当てて撮影した
「Architecture」シリーズ。

強制的にぼかされた建築は、余計なラインや
弱いディテールを失い、強靱なフォルムだけが残る・・・


杉本氏の作品はどのシリーズにも明確なコンセプトがあり、
時間とコストを惜しまず自己イメージを徹底して追求する情熱は
それぞれの作品のクオリティに如実に現れています。

医療機器を改造して開発した現像機を使って現像ムラの
ないようにしても納得するネガは数十枚に一枚、
作品を入れるフレームは全て自身のスタジオにて
自作という完璧主義。

絵画とはまた違う、写真のオリジナルプリントだけが持つ
神秘的なパワーを久々に感じた時間でした。

以前、カメラマンの友人にMichael Kenna
オリジナルプリントを見せてもらった時にも
同じように鳥肌が立った事を思い出しました。


杉本氏は写真だけでなく香川県直島にある
ベネッセハウスの「家プロジェクト」で
老朽化が進んでいた護王神社の改築も手掛けています。
展示会場内にはその模型も置いてありました。

ベネッセハウスには安藤忠雄氏が設計した
「地中美術館」もあります。
また島全体をコンテンポラリーアートスペースとして
捉えた直島自体にも非常に興味があり、
以前から行きたいと思っていた場所だったのですが、
これでもうひとつ強烈に行くべき理由ができました。


ついでのつもりで足を運んだ展示会でしたが、
ダヴィンチ展と同じ比率で行って良かったと思いました。

こちらは来年の1月9日まで開催されています。
その後世界巡回するそうです。

ダヴィンチ展と一緒に行ってもいいし、
これだけを単独で見に行っても十分価値アリです。

会期中に行ける機会があれば
再度訪れたいと思います。

あぁ、今日も長々と書いてしまった・・・。
by izola | 2005-11-03 23:58 | 美術館(国内)

旅は心の宝石箱