2006年 01月 21日
モダンソウル・リサーチ/13
1950年代、
当時韓国の経済事情は非常に悪く、
たくさんの貴重な文化財の海外流出に心を痛めた
初代イ・ビョンチョル会長が、自国の重要な文化財
と美術品を収集しはじめ、
その後1970代からは現会長のイ・ゴンヒ氏が
陶磁器コレクションと海外現代美術を
充実させたものがLeeumコレクションの基礎になります。
その数は数万点に及ぶそうです。
Museum 1の設計を担当した
マリオ・ボッタは1943年スイス生まれ。
母国スイスや欧米各地で数多くの住宅や教会、美術館等を
手がけている世界的な建築家です。
四角と逆円錐形の組み合わせによる力強い外観と素材使いは
いかにもマリオボッタらしいデザインといえます。
外壁に使われたテラコッタは地球と火、
韓国の伝統文化を象徴し、
左の四角い建物は古代の要塞を、
逆円錐形のロトゥンダは陶磁器の花瓶を巨大化したような
神秘的な形をイメージしたそうです。
3棟の美術館の中ではここが一番好きでした。
中でも素晴らしかったのが、
NYのグッゲンハイム美術館を思わせる
ロトゥンダの中の光溢れる螺旋階段。
目映い光が地下のエントランスホールまで照らします。
(*↑この写真はマリオボッタのHPから引用。)
光の効果を熟知したマリオボッタらしい設計。
ここは入館するとまずEVで4階まであがり、
そこから各展示フロアを回遊しながら
この螺旋階段で下まで降りていく流れなのですが、
外観、展示フロア、螺旋階段が美しいコントラストを成していて、
単調になりがちな古美術を飽きずに最後まで見れるように
工夫されています。
3,4Fは高麗青磁、粉青沙器、朝鮮白磁のコレクションの中から
60点余りが展示されていますが、この陶磁器の展示ケースが
まるでジュエリーケースのような美しさでした。
一目見た瞬間に谷口吉生氏の設計した法隆寺宝物殿
の展示ケースを連想しました。
このケースはデザインの美しさはもとより、
最先端のセキュリティシステムと陶磁器に最適の温湿度に
コントロールされたケースです。
陶磁器に一番重要とされる照度も完璧で、
青磁や白磁の持つ滑らかで艶やかなフォルムと質感が
ほの暗い静寂の中にふわりと浮かぶような幻想的な展示です。
2階は朝鮮時代の絵画と書が、
1階には仏教美術や土器、金細工などが展示され、
韓国伝統文化の奥深さを垣間見ることができます。
この日は来館者が少なかったようで、
私たちがMuseum 1を見ている間は警備スタッフ
以外は誰もおらず、とてもゆったりと静かに
美しい古美術の数々を堪能することができました。
展示フロアの広さとコレクションの豊富さを思うと
展示している美術品はごくごく一部ですが、
3〜4ヶ月ごとに展示品を入れ替えて常設展+企画展
というコンセプトで運営しているそうです。
とても質の高い美術館でした。
*次回は「Museum 2」をご紹介します。
by izola
| 2006-01-21 20:45
| ソウル2005