2006年 09月 27日
野草一味庵 美山荘/3
写真は美山荘の敷地内に流れる美しい清流。
離れはこの清流沿いに建っており、
離れの各部屋には清流の上にかかるように月見台があります。
お風呂もこちら側にあります。
このロケーションは二期倶楽部の本館に
よく似ているなと思いました。
あちらの方が全体の規模は大きいですが、
どちらの宿もこうした自然の中に
溶け込むような造りとなっています。
清流側の庭の一角に夕食に出される岩魚と鮎を
泳がせておく池がありました。
岩魚も鮎も目の前の清流を泳いでいたものだそうです。
夕食前に控えの間で西瓜とアニスのカクテルが出されました。
カクテルを飲んだら隣の座敷に場所を移して
いよいよお楽しみの夕食がスタートです。
ここでは食卓は無く、座敷の畳の盆の上に直接食事が
運ばれて来ます。
まずは大きな塗盆に乗せられた八寸が運ばれてきました。
この八寸を見た瞬間に今宵の食事は間違いなく素晴らしいもの
になると確信できました。
彩りよい八寸は竹煮草の上。
カタクリの根、黄身の味噌漬け、焼き枝豆、鰌の南蛮
鹿比谷唐辛子の鰌卵詰め、川海老の唐揚げ、
蒟蒻のアラレ揚げ、根曲竹、トマトスープ。
この手拭いを膝の上に広げて食事をいただきます。
大きな蕗の葉の上に置かれたチロリ。
酒の演出も見事。
賀茂茄子の白味噌仕立てと岩魚の刺身。
この白味噌仕立て、あまりの美味しさに思わず身悶えするほど。
岩魚は先程庭先で見かけたもの。
川魚の臭みは全く感じませんでした。
新蓮根とオクラの味噌漬け。
野菜の食感を活かした程よい漬け具合が絶妙。
鮎寿司。こちらも臭みは全くなし。
この水差しのデザイン、素敵すぎます。
鰻の白焼きと葛豆腐の碗もの。
これぞ京料理の出汁・・・に、うっとり。
鰻はふんわり葛豆腐はしっとり。
メインは鮎の炭火焼き。
焼立てが大きなざるに笹を敷き詰めた上に乗せられて
このように運ばれてきます。
大きな鮎がひとり三尾ずつ。
食べきれないのでニ尾でいいと言うと、
翌朝あたためてお持ちしますね、と残りを下げてくれました。
古伊万里のみじん唐草の長皿に鮎を取り分けて。
手前はたで酢。
口直しのじゅんさい。
器の絵が中底まで描かれています。
炊きあわせはモロコ豆、葉竹、蕗、イタドリ、湯葉しんじょ。
お茶を入れている急須がまた素晴らしい。
錫に漆を塗って仕上げているものだそうです。
最後の御飯と香の物。
たっぷりの生姜が混ぜ込まれたご飯は締めにぴったり。
爪楊枝と器も手抜かりなし。
デザートは白桃にレモングラスのジュレを掛けたもの。
みずみずしい白桃にレモングラスの香りが爽やか。
飲み切れなかったお酒は夕食後のお風呂上がりに
器を変えて出してくれました。
摘草料理と聞くと本当に葉っぱや山菜などクセのある
食材が中心の精進料理的なものかと想像していましたが、
地元で採れる上質で季節感溢れる食材をふんだんに使った
会席料理は、味も量も演出も器も申し分ないものでした。
ただ、私は素晴らしく好みに合いましたが
川魚や和の香り野菜(山椒、茗荷、生姜、山葵、
三つ葉、柚子等)や山菜が苦手な方にはここの料理は
あまりお勧めできないかもしれません。
料理は若い仲居さんの手でひと品ひと品タイミングを見計らって
丁寧に運ばれます。わずか4組のゲストということもあり、
冷たいものは冷たく、熱いものは目の前で作られたように熱く
どれも理想的な状態で供されます。
食事の間にときおり顔を出し言葉を交わす
若女将との会話もとても楽しく、
眼も胃も心も優しく温かく満たされた
静かで豊かな時間でした。
*次回は朝食をご紹介します。
by izola
| 2006-09-27 17:43
| 美山荘