2006年 12月 07日
紅葉逃亡記/5
日が暮れてまもなく、
母屋からお迎えが来ました。
離れのゲストは母屋の左奥にある
カウンタ−形式の食事処で夕朝食をいただきます。
こちらは宿泊客以外でも気軽に食事に来てもらえるようにと
数年前に新しく造られたお部屋。
ここも中村外ニ工務店による数寄屋建築です。
上質でありながら潔くシンプルな造りは離れと同じ。
左の暖簾の奥が厨房。
手前は主に料理の仕上げをする小さな厨房。
そこをぐるりと囲むように白木のカウンターが設えてあります。
席は3組のみ。
今宵のゲストは皆さん常連の宿泊客でした。
席には各々違う柄の丸盆が。
隣は鯰、私は兎柄でした。
夏は硝子、秋は錫の器で出される食前酒。
一品目は八寸と思いきや、
大きな銀杏がたくさん入った朴葉味噌焼き。
これが驚く程美味しかった。
お酒好きな方ならこの一品だけで相当お酒が進みます。
次は本日のメインとも言える茸盛り合わせ。
松茸&黒川茸&しめじ。
思わずおぉ〜と唸る程の大きな松茸に全員目がキラキラ☆
目の前で丁寧に炭火焼きにしてくれます。
茸が焼けるのを待つ間に出てきたのは
かぶらのあちゃら漬。
岩魚の造り。
今宵のお酒は赤ワイン。
松茸には赤が合うかなと思い、
コート・デュ・ローヌを選びました。
ワインが開いた頃にタイミング良く焼けた丹波の松茸。
こんなたくさんの松茸をひとりで食べていいの?
と思わず聞いてしまいそうになってしまいました。(笑)
しゃっきりした歯ごたえと脳まで響く香りはさすが。
続いて出されたのは黒川茸としめじ。
黒川茸は茸好きにはたまらない茸だそうで、
松茸よりもこちらを好む方もいるそう。
口にした時に一瞬苦味を感じますが、苦さは後に残りません。
身体に良さそうな味です。
しめじは椎茸か?と見まごう程の立派さでした。
碗ものはいくち茸、むらさき芋の合せ白味噌仕立。
白味噌の美味しさは京都で目覚めました。
むかご葛寄せは懐かしく温かい味。
このタイミングで八寸が出るのが面白い。
里芋胡麻揚、地玉子みそ漬、栃もちこんにゃく、
川海老、菱etc。
可愛いサイズの鯖寿司。
これはお茶?と思ったらお吸い物でした。
とても良い味が出ているので何が入ってるのか
聞いてみると「ばちこ」との事。
更にばちこって何??と聞くと、ナマコの卵巣を乾燥させた
珍味中の珍味と言われる食材だそうで、
三味線のバチのような形からばちこと言われるそうです。
とても珍しいものをいただきました。
子持ち鮎の杉板焼きは軽く味噌漬けにしてありますが、
たっぷり詰まった卵とその味噌漬け加減が絶妙で、
夏の鮎よりもこちらの方が気に入ってしまいました。
これも赤ワインに恐ろしく合いました。
珊瑚茸のお浸しはさっぱりと上品。
最後は鍋にたっぷり作られたきのこ汁。
仕上げに蓮根団子と葱を加えます。
温かい汁物で満腹の胃袋もほっこり。
粉山椒に添えられた小さな匙は乾燥した
しば栗の実を利用したもの。
御飯は匙の材料になったしば栗を使った栗御飯。
鬼皮を薄ーく残した小さなしば栗は天津甘栗のように
甘味が強く、とても美味しかったです。
デザートはとろりと柔らかい大城柿の上に可愛い冬苺。
食後はこの日の食材について質問したり
調理の秘けつを教えてもらったり、
美山の四季の話を聞いたり・・・と
すっかり長居してしまいました。
母屋の座敷でいただく方が摘み草料理を味わうという
風情や演出を楽しむ事が出来ますが、
カウンターでの食事は調理の仕上げや素材を
直に目にする事が出来たり、直接料理人の方と話が
できるという楽しみがあります。
正座が苦手な方は足を下ろせるカウンタ−での
食事の方が落ち着いて料理を味わえるのではないでしょうか。
秋の夕餉も夏とは全く違う魅力に満ちた
素晴らしい味と時間でした。
食事の最後に
「冬は猪や鹿などの鍋や根菜類がとても美味しいんですよ。」
と、しっとりたおやかな天使のような笑顔で若女将が
教えてくれました。
それって悪魔のような誘いだわ。。。(笑)
by izola
| 2006-12-07 20:54
| 美山荘